2008-01-01から1年間の記事一覧

013 硝子戸の中

好きな一文 私がHさんからヘクトーを貰った時の事を考えると、もう何時の間にか三、四年の昔になっている。 理由 この章に限らず、この短編集は各章の、第1文のことばが、はっきりしていて、テンポもよく、心にポンッと入ってきます。次をつい読み進めてしま…

012 道草

好きな一文 「己は決して御前の考えているような冷酷な人間じゃない。ただ自分の有っている暖かい情愛を堰き止めて、外に出られないように仕向けるから、仕方なしにそうするのだ」 理由 細君に対する健三の態度が良くない理由として健三自身が細君に言う言葉…

011 三四郎

好きな一文 「熊本より東京は広い。日本より……」で一寸切ったが、三四郎の顔を見ると耳を傾けている。「日本より頭の中が広いでしょう」 理由 三四郎が熊本から上京するときに男が言った言葉です。十代思春期真っ只中の私にとって、人生の可能性が広がったよ…

010 草枕

好きな一文 「山路(やまみち)を登りながら、こう考えた。 智(ち)に働けば角(かど)が立つ。情(じょう)に棹(さお)させば流される。意地を通(とお)せば窮屈(きゅうくつ)だ。 とかくに人の世は住みにくい。」 理由 色々いっぱいいっぱいになってく…

009 夢十夜(第七夜)

好きな一文 「自分は大変心細くなった。何時陸へ上がれる事か分らない。そうして何処へ行くのだか知れない。ただ黒い煙を吐いて波を切っていくことだけは確かである。(中略)自分は大変心細かった。こんな船にいるより一層身を投て死んでしまおうかと思った…

008 行人

好きな一文 「そうして私をそこへ取残したまま、一人でどんどん山道を馳け下りて行きました。その時私も兄さんの口を迸しる"Einsamkeit, du meine Heimat Einsamkeit !(孤独なるものよ、汝はわが住居なり!)"という独逸語を聞きました。」 理由 このシーン…

007 夢十夜(第八夜)

好きな一文 「豆腐屋がラッパを吹いて通った。ラッパを口へ宛がっているんで、頬ぺたが蜂にさされた様に膨れていた。膨れたまんまで通り越したものだから、気掛りで堪らない。生涯蜂にさされている様に思う。」 理由 『夢』ならではの妙な不安感がたまらなく…

006 それから

好きな一文 「今日始めて自然の昔に帰るんだ」と胸の中でいった。こういい得た時、彼は年頃にない安慰を総身に覚えた。〜中略〜そうして凡て(すべて)が幸であった。だから凡て(すべて)が美しかった。」 理由 だれもが柵多き人生で、自然のままに在ること…

005 坊ちゃん

好きな一文 「それ以来蒼くふくれた人を見れば必ずうらなりの唐茄子を食った報いだと思う。この英語の教師もうらなりばかり食ってるに違いない。尤もうらなりとは何のことか今もって知らない。」 理由 ぼけつっこみの原型が1906年の小説で描かれていたとは・…

004 こころ

好きな一文 「自由と孤立と巳れとに充ちた現代に生まれた我々は、其犠牲としてみんな此淋しみを味はわなくてはならないでせう」 理由 若い頃は先生への憧憬があったように思いますが、歳を重ねてふたたび読み返してみると、先生に対しての感情に変化がありま…

003 趣味の遺伝

好きな一文 「どう間違ったって浩さんが碌々として頭角をあらわさないなどと云う不見識な事は予期出来んのである。——それだからあの旗持は浩さんだ。」 理由 話の中で「余」が亡友の浩さんの事をどれだけ尊敬し、信頼していたかがよくわかります。情景描写が…

002 坊っちゃん

好きな一文 「死ぬ前日おれを呼んで坊っちゃん後生だから清が死んだら、坊っちゃんのお寺へ埋めて下さい。お墓のなかで坊っちゃんの来るのを楽しみに待っておりますと云った。だから清の墓は小日向の養源寺にある。」 理由 全体のテンポの良さと話の痛快さの…

001 坊っちゃん

好きなシーン 2階から飛び降りるシーン 理由 飛び降りたところがすごく痛そうだった。 (峰子/キャビンアテンダント 女 神奈川県)